これから役へのアプローチについて話していきますが、
その前に注意があります。
それは、役へのアプローチだけ研究しても良い演技はできない。
ということです。
それは、プロの野球選手の戦略、試合の運び方、
プロのゲーム展開の方法を頭で学んだ所で、
プロの野球選手としての身体作り、
基礎練習を積んでいなければ試合に出られないのと同じです。
演技者は「役へのアプローチ」と
「俳優の楽器の訓練」の二つがそろって上達していきます。
それを忘れないでください。
では、本題に入りましょう。
舞台やカメラの前で、役として自然に反応できるようにするためには、
その為の身体の訓練が必要になります。
何も訓練していない身体で、演技をしても、内側ではいろいろな事が起こっているにも関わらず、「伝わらない」演技になってしまうのです。
よく、「自分の中ではやっているつもりでも、演出家から『伝わってこない』って言われるんです」という人がいますが、それはひとえに俳優としての楽器が硬いからです。
「伝わる」演技をする為には、「伝わる」俳優の楽器を持たなければいけません。
それが毎日15分行うエクササイズです。
演技が上達する為の第一段階です。
演技訓練とは、上手に感情を込める技術を身に付けることではありません。
自分の体を繊細にしてあげて、感情が生まれてきやすいように調律してあげることです。
せっかく生まれてきた感情があっても、それが外に表れていかなかったら観客に伝わりませんよね。
どんなに心の中でいろいろな感情が生まれていても、それが体に表れていなかったら何にもなりません。
何をやっているのかわからない演技になってしまいます。
(※だから多くの人は安易に感情を込めたがるのでしょうか?)
俳優として良い演技をしたいのであれば、
まずはこの俳優としての楽器の調律を目指してください。
自分が思ったこと、感じたこと、考えた事が自然と
目や顔や声、しぐさに表れてくる繊細な体を身につける訓練です。
海外で活躍する俳優達はまずここから取り組んでいます。
リラックス、注意の集中、感情のオープン、想像力を高める。
エクササイズを行う事。
一日15分です。
その積み重ねがあなたを助けてくれます。
エクササイズは、ただ形を真似するのではなく、最終的に何を手に入れる為に必要なのかを理解した上で行う事です。
そして、問題にぶつかったら、いろいろ試してその結果を研究してみる事も大事です。
それが問題解決能力のある演技者に育ててくれます。